《僕と新日本プロレスと》新日本プロレスのブログ

主に80年代、90年代の新日本プロレスのアングル、名言を書いたブログです。

新日本プロレス 1983年クーデター事件《前編・起》

クーデターとは、フランス語で「国家の一撃」もしくは「国家に対する打撃」を意味し、既存の支配勢力の一部が、非合法的な武力行使によって政権を奪うことをいう。

血判状
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《前編目次》

1.まえがき

1983年新日本プロレス内部で元レスラー、レスラー、フロントによるクーデターが計画・実行されました。これは、その時の血判状です。

上段にレスラー・レフェリーの名前、下段にフロントの名前が記載され、(総18名)この血判状には、以下の様なことが、書かれています。

《団結誓約書》
新日本プロレスにおいて、我々の望む改革ができた場合も、また、新日本プロレスを離脱し、新団体を結成する場合、いずれにおいても、今後全てに一致団結して対処していくことをここに誓約する。
昭和58年8月24日

上段の名前は、山本勝(小鉄)、藤波辰巳吉田光雄(長州力)など。
また、下段の最初には、このクーデターの中心人物でもある大塚直樹さんの名前があります。


2.クーデター直前の新日本プロレス

当時の新日本プロレスは、タイガーマスクの存在、長州力のかませ犬事件を経ての藤波辰巳との名勝負数え唄、アントニオ猪木は、はぐれ国際軍団ラッシャー木村との抗争など、ファンの心を掴んだカードを提供しており、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。
中でもタイガーマスクの人気は別格で、小学生だった僕も夢中になりました。

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毎週金曜夜8時のワールドプロレスリングは、日テレ「太陽にほえろ」、TBS「金八先生シリーズ」と同じ時間帯でありながら、20パーセントを超える視聴率を叩き出し、テレ朝のキラーコンテンツとなっていました。

1983年。
そんな絶頂期の新日本プロレスですが、内部では、赤字をたれ流すアントンハイセル問題、タイガーマスクの結婚問題、長州力のフリー宣言など、色々な不安要素を抱えていました。

上記問題を抱えながらも、本業の方は好調で、5月6日には、3年越しの念願でもある第1回IWGPシリーズを開催し(予定よりはかなり縮小してしまいましたが…)、各会場を超満員としていました。


3.クーデターの前兆

順調に進んでいた、IWGPシリーズでしたが、シリーズ後半となる6月に入ったあたりから、その不安要素が、徐々に芽を出し始めます。

まず、6月1日 長州力アニマル浜口新日本プロレスからのフリー宣言を行い(6月17日に辞表を提出)、またそのフリー宣言をかき消す様に6月2日 IWGP勝戦での猪木が舌出し失神事件を起こしてしまう。

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ここで「起こす」と書いたのは、この舌出し失神事件は、アントニオ猪木の自作自演ではないかと言われているからです。
猪木は、ハルク・ホーガンとの試合後そのまま救急車で、東京医科大学病院へ運ばれ、入院していますが、坂口征二山本小鉄新間寿氏が一人も病院におらず、記者会見が出来ない状態であったことが、それを証明していますね。

また、6月17日に辞表を提出した長州、浜口以上に新日本プロレスが頭を抱えていたのは、タイガーマスク佐山聡)の結婚問題です。
ドル箱スターだったタイガーマスクが結婚することで、新日本プロレス人気の下落を心配した新間寿氏と佐山聡の関係は、6月10日の時点で、すでに決裂している様でした。

1983年6月12日 メキシコシティ・エル・トレオ・デ・クアトロ・カミノス WWFジュニア・ヘビー級王座決定戦 タイガーマスクVSフィッシュマン
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上記、試合のため、メキシコに向かった、タイガーマスク新日本プロレス営業部長の大塚直樹氏ですが、遠征中に佐山の口から出るのは、新日本プロレスへの不満ばかりだったそうです。
タイガーマスクの生みの親でもある新間寿氏でしたが、大きくなりすぎたタイガーマスクのコントロールは出来なかった様ですね。


4.クーデターのきっかけ

そして、6月30日第12回定時株主総会に出席した当時の営業部長の大塚直樹氏は、その事業報告書を見てあ然としました。
売上(19億8741万円)に対する繰越金(725万円)が少ないこと、また、株主配当もなく、アントンハイセルのことについては、なにも記載がないことに不審を持ち、新日本プロレスからの独立を考え始めます。

これにアントンハイセル問題、タイガーマスク結婚・引退問題、長州力の新日退団、山本小鉄の新団体設立計画など、色々な問題が絡み合って、新日クーデターと言う大きなうねりが生まれました。

そして、アントニオ猪木不在のまま、7月1日 サマーファイトシリーズが開幕していきます…

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