《僕と新日本プロレスと》新日本プロレスのブログ

主に80年代、90年代の新日本プロレスのアングル、名言を書いたブログです。

新日本プロレス 1983年クーデター事件《中編・承》

《前編・起からの続き》
kent-wrestling.hatenablog.com

《中編・承目次》

1.クーデター計画の出発点

1983年6月30日 第12回定時株主総会の事業報告書を見た営業部長の大塚直樹氏は、その不信感から、翌7月1日 山本小鉄へ相談をしました。
山本小鉄もまた、アントンハイセルへ資金が流出し、選手や社員への還元がされていないと感じ、現状に不満を持っていることを知ります。
これだけの人気がありながら、全く上がらないファイトマネーに選手全員が、不信感を持っていたのは間違いない様です。

その夜、山本小鉄と大塚は、新団体設立資金3億を山本小鉄が準備し、また、この計画を具体的に実行するかどうかを新団体のエース候補の藤波辰巳の気持ちに委ねました。

新団体のエースは藤波辰巳
選手には山本小鉄が話をつける。
営業には大塚直樹氏が話をつける。
そして、新団体名は「ワールドプロレスリング」。

これが、クーデター計画の出発点となりました。


2.クーデターの分裂

山本小鉄は、7月12日 藤波辰巳をエースとした新団体の設立計画を藤波辰巳に話します。
藤波は、これを「ひとつ返事」で快諾し、とにかく何を言ってもOKだったらしく、現状への不満が相当大きかったことが伺えます。

また、7月27日巡業先の金沢で、新間寿タイガーマスクが話し合いが持たれました。
佐山の結婚を渋々認めた新間だったが、極秘結婚式をさせたい新日本プロレスと佐山の間で、もめており、佐山は、「それなら会社を辞めます」と回答しており、この時に話し合いがなされました。

そして、7月29日 小鉄の説得により、タイガーマスクがクーデターに合流することになります。

8月4日 サマーファイトシリーズ最終日の蔵前国技館。 NWA世界ジュニアヘビー級選手権タイガーマスク VS 寺西勇の試合前に「タイガーマスク」から名前を変更する報告を行うタイガーと新間寿
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結局はこの試合がタイガーマスクとしての最後の試合となってしまいました。

また、もうひとりの人気レスラー長州力について、8月5日 小鉄の自宅にてその扱いについて話がなされました。

血判状にある通り、クーデターには、フリーとなった長州力も名前を連ねていましたが、内情はこのままフリーで活躍していきたいこと、猪木の温情によりフリーとなって新日本プロレスのリングに上がれていることから、どちらかというと猪木寄りの姿勢でした。
レスラー、社員全員でクーデターを起こしても、猪木・新間に太刀打ち出来ないと思っていたのだと思います。

そして、結果として、小鉄の支援者である中村パンからの3億円の資金調達は上手くいかず、このクーデターは、大きなうねりの中、この後、3つのグループに分裂していくことになります。

①テレ朝幹部と小鉄による社内クーデター派
テレ朝からの出向幹部により新団体設立ではなく、猪木・坂口・新間を外した形で、内部改革を行えば良いと諭された内部改革派となります。
テレ朝からすると、新団体への乗り換えは簡単ではなく、アントニオ猪木なしの「ワールドプロレスリング」は、無理だと思ったのだと思います。

②大塚氏その他社員による新団体設立派
当時のアントニオ猪木新間寿氏この二人の影響力は相当に大きく、全社員・全レスラーが一丸となってかかっても敵わないと考えた新団体設立派となります。
実際にはこれが正解だと思います。
それ程、当時の猪木は大きい存在でした。

③タイガーによる独立プロダクション派
このグループは、次章に記載のタイガーマスク引退とともになくなります。

3.タイガーマスクの引退

電撃が走ります。

8月11日 タイガーマスクが引退を発表
8月12日 マスクと2つのチャンピオンベルトを返上

引退する直前のタイガーマスクは、曽川庄二氏ことショウジ・コンチャに入り込まれていました。
これにより、新間寿氏との間に亀裂が生じていました。
これに加え、タイガーマスクの結婚問題、自身の格闘技への考えの問題、ファイトマネー問題、そして、このクーデター問題に嫌気がさし、引退を選択したのではないかと言われています。
やはり、天才の扱いは、難しいですね。

タイガーマスクも一時は、このクーデターに加担をしていましたが、大塚直樹氏たちは、どうしてもコンチャを信用できず、孤立したタイガーマスクとコンチャは、独自で動き出すこととなり、マスコミに向けて引退を表明、新しい格闘技を目指しタイガージム設立へと動いていきました。
 
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4.血判状

8月24日 内部分裂してしまったクーデターメンバーをまとめるため、赤坂プリンスホテルの一室で、この血判状を作成しグループメンバーの結束を高めます。

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山本小鉄は、鬼軍曹として、新日本プロレスの若手を鍛えている清廉潔白なイメージがありますが、実際には、お金にだらしなく、また、野心家だった様です。
今回のクーデターも本来であれば、新日本プロレスのレスラー・社員のためのものでしたが、この山本小鉄個人の野心により、クーデターはあらぬ方向に進んで行きます…