《僕と新日本プロレスと》新日本プロレスのブログ

主に80年代、90年代の新日本プロレスのアングル、名言を書いたブログです。

新日本プロレス 1983年クーデター事件《中編・転》

《中編・承からの続き》
kent-wrestling.hatenablog.com
kent-wrestling.hatenablog.com
《中編・転目次》

1.猪木の社長辞任とトロイカ体制

山本小鉄は「社長のアントニオ猪木、副社長の坂口征二、営業本部長の新間氏を失脚させて新日本を改革する」と内部改革を言い出したことで、当初構想に掲げていた新団体設立へと動いていた大塚直樹氏との間に亀裂が生じていました。
新団体設立の資金調達は、山本小鉄が行っていたが、小鉄があてにしていた大手スポンサー(中村パン)が他社(山崎製パン)に買収され、資金調達に難航していました。

8月25日 ブラディファイトシリーズ開幕直前、緊急役員会が開かれ、役員会の場で小鉄血判状を持ち出して内部改革を強行し、シリーズ開幕戦が行われる大宮スケートセンターの控室で猪木に改めて退陣することを要求しました。

血判状は、内部改革か新団体設立か、どちらになっても一致団結して行動し、いかなる場合も個人的利益に走らないことのために作られたものでした。
しかし、新団体設立に向けて資金調達が出来ずに追い詰められた小鉄は内部改革しかないと考え、血判状を猪木、坂口、新間寿氏退陣のために活用してしまいました。

猪木は、小鉄の要求を受け入れて退陣し、坂口は取締役に降格、新間寿氏は謹慎とされ、小鉄とテレ朝出向幹部2名による「トロイカ体制」が誕生し、小鉄ひとりが代表取締役に就任しました。

トロイカ体制
代表取締役 大塚博美
同     望月和治
同     山本小鉄

取締役   坂口征二
同     小林省三
同     泉穀一

監査役   増井智
同     林治郎

f:id:kent_copen:20211128124821j:plain
しかし、これにより、大塚直樹氏らは、小鉄だけ代表取締役に就任し、完全に個人の利益に走ったと見てしまい、その後、協力はしませんでした。

9月1日 大塚直樹氏は、退社を決意して猪木を訪れましたが、その際、猪木がクーデター計画の全てを把握していることに驚きました。
猪木は、藤波や佐山から全てを聞いたことを明かします。
藤波も師匠の猪木の前では、直立不動で逆らうことはできず、タイガーマスク(佐山)のせいにして、自分は悪くない態度をとった様です。
そして、猪木はクーデターは必ず失敗すると断言しました。
そもそも、藤波辰巳にリーダは性格的にも無理だったのでしょう。

2.俺の首をかっ切ってみろ

ブラディ・ファイト・シリーズ 1983年8月28日 田園コロシアム アントニオ猪木 VS ラッシャー木村の試合後、アントニオ猪木はマイクを握りこう叫んだ。
f:id:kent_copen:20211127225738j:plain
「おまえら、姑息なことなどせず、堂々と俺にかかってこい。俺のクビをかっ切ってみろ、坂口お前の挑戦も受けてやる。いいか、てめえら、強いものが天下を取れ、この野郎、いつでも受けてやるぞ!この野郎」

この言葉は、アングルなどではなく、社長を辞任させられた猪木の「心の叫び」に聞こえます。

藤波辰巳は、猪木の復活の勝利を祝いにリングに上がる予定だったが、鬼気迫る形相の猪木を見て、リングインすることができませんでした。

そう、やっぱり、新日本プロレスアントニオ猪木の団体であり、当時の藤波や大塚直樹氏ごときにアントニオ猪木をコントロールすることなど出来なかったのです。
新団体設立を断念した時点でこのクーデターは失敗に終わっていたことを物語るシーンでした。

3.クーデターの鎮圧

猪木の社長辞任から3ヵ月後、テレ朝専務の三浦甲子二が新日本のクーデター騒ぎに怒り「猪木を降ろすならテレビ朝日は新日本の中継を打ち切り、猪木に新団体を旗揚げさせ、新団体を放送させる」と発言します。

三浦専務の発言は、失脚させられた新間寿氏の差し金で、新日本を去る際に三浦専務に会った新間氏がトロイカ体制を崩壊させるように働きかけていました。
三浦専務は「テレ朝の天皇」として、事実上テレビ朝日を牛耳っており、猪木と坂口の支援者でもありました。

また、現場側でも現場を取り仕切る人間がいなくなり坂口が現場責任者として復権していたことからトロイカ体制は早くもほころびが見えていました。
やはり、同じ組織の中で、そう簡単に体制・役割は変わりません。

テレ朝から辻井博常務が新日本に送り込まれ、トロイカ体制に三浦専務の言葉をそのまま伝えると、三浦専務の威光には逆らえないとして大塚博美氏と望月氏は退陣、小鉄は最後まで抵抗しましたが、最終的に平取締役に降格となりました。

11月11日 臨時株主総会が開かれ、猪木と坂口が復権し社長、副社長に戻ったが、新間寿氏だけはテレ朝の要望で戻されず、代わりにテレ朝から役員が送り込まれて、新日本プロレスを監視することになりました。

《新体制》
代表取締役社長 = アントニオ猪木
代表取締役副社長 =岡部政雄(テレビ朝日)
取締役副社長 = 坂口征二
専務取締役=永里高平(テレビ朝日)

山本小鉄は、最後まで抵抗した様ですが、最後は、アントニオ猪木と二人で社長室に入り説得され、号泣して部屋を出てきて、クーデターはついに鎮圧されました。