《僕と新日本プロレスと》新日本プロレスのブログ

主に80年代、90年代の新日本プロレスのアングル、名言を書いたブログです。

新日本プロレス 1983年クーデター事件《後編・結》

《中編・転からの続き》
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《後編・結目次》

1.それぞれの想い

この記事を書いてみて、最後は鎮圧されてしまったクーデターでしたが、当時の新日本プロレスの選手やフロントの方々には色々な想いがあったのだなと感じました。

ひとつだけの問題ではなく、色々な問題が絡み合って、クーデターへ発展した。

最後に僕の感想を書いても仕方がないので、当時の雑誌のインタビューなどから選手の人達の想いを書いてみたいと思います。

2.アントニオ猪木の想い

8月28日田園コロシアムラッシャー木村との戦いの後のインタビュー記事より。
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まあ、私の場合、物事に対して生まれながら寛容な部分ってあるんですね。
試合の中では別ですけど、ひとつ問題が起こると、それが組織にとって非常に重大なことであっても、なんとなくそれを許容してしまうんです。
だからタイガーマスクの問題にしても、下の方から若い人間がそういう風に突き上げてくるエネルギーが湧いてくるというのは、私はいいことだと考えています。
まあ、私がいない間に起きたクーデターなんですけど、それをもエネルギーとして今後に役立てていきたいと考えています。
しかし、なるべく尾を引かない様に今後、レスラーが団結していくことが大事ですね。
プロレスというのは10年かかって作ってきたものが、一夜にしてすべてがくずれてしまうところがありますので、選手はひとりひとり、その点をよく自覚して考えてほしいですね。
まあ、クーデターやタイガーの問題にしても人間の主張というのは広大な宇宙に比べると鼻クソみたいなもので、そんなことでガタガタしたくないですね。
時間が答えを出してくれますよ。

8月なので、この時はまだクーデターの最中ですね。この記事を読むと、やっぱり猪木は人間が大きいですね。

3.藤波辰巳の想い

このクーデターが失敗した原因は、藤波辰巳の優柔不断さにあると思います。
誰にでもいい顔をするだけで、リーダーシップを取らなかったことが、クーデターの分裂・鎮圧につながりました。

たしかに、今回の新団体設立とクーデター事件は、新日本にとってイメージダウンをもよおすスキャンダルでした。
そして、悪いことには人間の欲望がからんだみにくい争いばかりが、表に出てしまった感じがあります。
しかし、よく考えてみると、みんな新日本プロレスをよくするためにやったことであり、その精神が底に流れていることも理解してほしいです。
クーデター事件はレスラーのための会社作りで動いたことも事実なのだからその精神を柱にして、新日プロの再建をはかることが、今後の課題であると思うんです。
そのためには、やはり新日プロの偉大なる象徴といってもいいアントニオ猪木を中心にして、もう一度、猪木さんがいつも語っているプロレスとは、闘いである。闘いはリングの上にしかないというこの言葉を思い起こし、がんばっていくしかないです。
今回のことで、社員やレスラーが安心して働ける会社を持つことが一番大事だと知りました。
だから、私は、猪木さんと腹をわっていろいろ
話をするつもりですし、相談もしていくつもりです。
必ず良い方向にむかっていくと思います。


4.大塚直樹氏の想い

当時の新日本プロレス営業部長である大塚直樹氏は、このクーデターの中心人物です。
彼は自身の著書の中で、このクーデターに対して、こう言っています。

私はいま、あのクーデター事件について、後悔はしていないが、反省はしている。確かに当時の新日本の経営には道義的問題があったかも知れない。しかし、新日本プロレスは猪木さんの会社であり、猪木商店であって、営業部長あたりが会社のカネの使い方に「物言い」をつけるのは不遜なことだったと思うのである。


5.新間寿氏の想い

新間寿氏の想いについては、以下の言葉に集約されます。

猪木には山本小鉄という正妻がいたが、そこに新間寿という愛人が出てきて猪木を取ってしまった。
このクーデターというのは山本小鉄の犬も喰わない男の嫉妬から始まったものなのだ。

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6.選手達の想い

当時の雑誌に各レスラーの想いを聞いた記事がありましたが、全員、当たり障りのないことをコメントしていますね。
主な選手のコメントを記載します。

まずは、この後、UWFのメンバーとなる選手達のコメントです。

前田明
それでレスラーの生活がよくなるもんだったらいいんじゃないですか。あとは時間が解決してくれると思います。
藤原喜明
全然、何も感じない。一生懸命やっていればいい結果が出るはずだ。
高田伸彦
全然分からないですね。違う世界というか、我々の入り込めない世界の出来事ですから。とにかく今のまま、安心してリングに上がれる状態であれば、いいんですけど…上がれるリングがなくなったら、おしまいですから。
山崎一夫
事務所の方では色々あるようですけど、僕らの生活というのは変わりないと思いますね。ただ精神的な動揺が一番こわいと思います。ファイトにブレーキがかかって、怪我したりしては元も子もありませんから。タイガーさんの引退によって、付け人という仕事からは開放されたけど、タイガーさんは、わがまを言ったりするような人じゃなかったから、付け人としての苦労はなにもありませんでした。むしろタイガーさんと接していると、得ることが多かったので、今はさびしい気持ちです。

そうですね、山ちゃんは佐山と仲が良かったので、この後、タイガージムにも所属します。

次に血判状にサインした選手達のコメントです。
永源遥
全然関係ないね。今後?いい方向にいきますよ。
永源は、このクーデターの結構な中心人物でしたので、あまり、コメントは出来ないでしょう。
木戸修
我々選手に言えることって、ないんじゃないの。うん、何も感じないし、別に変わらない。
小林邦昭
僕の個人的なショックというのは、当時の敵であるタイガーマスクがいなくなったことだ。残念の一言だよね。僕は正直いって、タイガーマスクという相手がいて、光ってきた人間だから、今なんか、誰を相手にしたらいいのか…僕は今でも叫び続けているんですよ。「カムバック、タイガーマスク!」とね。

7.まとめ

当時は、中学生だったため、こういう内部クーデターが起こっていたことをよく分かっていませんでした。
猪木や新間寿氏が社長を辞めたり、謹慎したりしていたのは、タイガーマスク引退の責任を取ってのものかと思っていました。
実際にはこんな事件が起きていたんですね。

最後まで見ていただき、ありがとうございました!